2016/05/17 ワンライ
ワンライ用小説
お題→新一章、魔法使い、武器を構える
※銃士が普通に同時に存在してます注意※
子どもは強い。
休日となれば尚更だ。
ましてや、快晴の浜辺などに喚ばれてしまえば、その迷信は確信に変わる。
僕が連れた……ではなく、もはや僕を連れてきたと言っていい子ども達二人は、戦闘も早々に切り上げて白い砂の上を走り回っていた。
照りつける太陽の下、遠くに横たわる水平線へ目を凝らす。
少し向こうで海が砂が太陽がとはしゃぐ二人の声を聞き流しながら、焼けるように熱い浜辺の上、僕はぼんやりと突っ立っていた。
この国の海は綺麗だ。
海を見るどころか知る方法すら多くは持たない僕らにとって、自分の目で見自分の心で感じる海は、どんな書物の挿絵より鮮やかだった。
ふと。
さざ波ばかりだった海辺に、派手な水音が響く。
空から視線を落としてみれば、青い帽子が吹き飛ぶくらい見事に転んだらしい彼を、赤い服の子が笑っていた。
僕が慌てて駆け寄ると、
「いまの見たか!? すげーよ」
と、もう一人を指差す。
「はしゃぎすぎるからだよ」
と言い終わらない内に、
「急に波がくるからだよ!」
起き上がった彼が片手で頬を拭いながらもう片方の手で青い帽子を拾いに行った。
「それと、こいつがころばしてきたんだよ。足をひっかけてさ」
「わるいな。おれ、足長いんだ」
黒いブーツが浅い波をパシャパシャかき回す。
相手はすっかり海水まみれになった帽子をかぶり水を吸った白い羽根飾りを揺らしながら、じとーっと片方を睨みつけていた。
「……ここまで来て喧嘩はよそう」
さらなる被害を予防せねば。僕は軽く首を振る。
「すぐに戻るんだから、喧嘩してるともったいないよ」
「そうそう」
視界の下の方で、黒帽子がうなずく。にやにや笑いを浮かべながら、「けんかしてる場合じゃねぇぜ、ほんとに」と見事な勝ち逃げを宣言した。
……関係ない僕までなんとなく腹が立つ。多分、もう一人の子と同じ表情で、彼を見つめていたと思う。
そうしている間にも海は波をこちらへ寄せては返し白い砂を湿らせて、服越しに肌を焼けそうな日光がそれを休むことなく乾かしている。
再び駆け出した二人の背中を見つめ、軽いため息をつく。
休日の子どもは強い。
どんな大人も振り回される他ないのだ。
胸の中に溜まったなんとも言えない気持ちを最後の最後まで吐き出してから、空気と一緒にたっぷりの潮の香りを肺へ送り込む。
再び息を吐きながら伸びをして、直ぐそばを風が通り過ぎるのを確かめる。
海から浜へ、浜から海へ……。数え切れないほどの風が流れていく。
足元を眺めながら、寄せる波で靴が濡れないギリギリのところを狙って歩く。
そんな風にして、綺麗に晴れた青い空の下、残された時間を過ごすのは悪くない。
しかし、今日の仲間はそれを許してくれるほど寛容な理解者ではなく、
「くらえぇ!!!!」
の掛け声とともに大量の海水を脛へぶちまけてくる、安息の破壊者だ。
しかも二人だ。
「よっし当たった」
「すごいでしょ、アクアだよアクア」
知らない。
両手にいっぱい掬った海水をかけるだけで水魔法を名乗っていいものだろうか。
しかし、僕の安らぎを求める心とブーツにそこそこのダメージが入った気はする。
「靴もズボンも洗うの大変だからあんまり汚さないで欲しいなぁ?」
「帰ってもどうせ汚すだろ」
赤い方がこちらを見上げ、その隣で青い方がうんうん頷いている。
その通りだがそうじゃない。
「すぐに戻るんだからイライラしてるともったいないぜ」
「そうだね」
乾いた笑いしか出ない。
「あーそうだ、忘れてた」
「何?」
「みずでっぽう。もってきたんだ」
黒い手袋に握られているのは紛れもない水鉄砲だ。どれどれと覗き込むもう片方に、この前海に来た時にとか、誰それに作ってもらってどうたらこうたらと話し込んでいる。
多少の嫌な予感を覚えながら様子を伺うと。
二個ある。
水鉄砲が二個ある。
……。
「じゃあふたりで遊んでて」
と言い始める暇も無く、
「兄ちゃんオトナだからハンデな」
「ぼくら子どもだから武器つかうね」
ふたつのオモチャの銃口は、逃げ場もなす術もない僕へ向けられた。
子どもは強い。
休日となればなおさらだ。
ましてや、快晴の浜辺などに喚ばれてしまえば、その予感は真実に変わる。
極限までコマンドがアップした子ども達二人の前で、1ターンも与えられず戦場に放り出された僕はほぼ無力であり、一撃を放つ余裕もなく打ちのめされる他ないのだ。
お題→新一章、魔法使い、武器を構える
※銃士が普通に同時に存在してます注意※
子どもは強い。
休日となれば尚更だ。
ましてや、快晴の浜辺などに喚ばれてしまえば、その迷信は確信に変わる。
僕が連れた……ではなく、もはや僕を連れてきたと言っていい子ども達二人は、戦闘も早々に切り上げて白い砂の上を走り回っていた。
照りつける太陽の下、遠くに横たわる水平線へ目を凝らす。
少し向こうで海が砂が太陽がとはしゃぐ二人の声を聞き流しながら、焼けるように熱い浜辺の上、僕はぼんやりと突っ立っていた。
この国の海は綺麗だ。
海を見るどころか知る方法すら多くは持たない僕らにとって、自分の目で見自分の心で感じる海は、どんな書物の挿絵より鮮やかだった。
ふと。
さざ波ばかりだった海辺に、派手な水音が響く。
空から視線を落としてみれば、青い帽子が吹き飛ぶくらい見事に転んだらしい彼を、赤い服の子が笑っていた。
僕が慌てて駆け寄ると、
「いまの見たか!? すげーよ」
と、もう一人を指差す。
「はしゃぎすぎるからだよ」
と言い終わらない内に、
「急に波がくるからだよ!」
起き上がった彼が片手で頬を拭いながらもう片方の手で青い帽子を拾いに行った。
「それと、こいつがころばしてきたんだよ。足をひっかけてさ」
「わるいな。おれ、足長いんだ」
黒いブーツが浅い波をパシャパシャかき回す。
相手はすっかり海水まみれになった帽子をかぶり水を吸った白い羽根飾りを揺らしながら、じとーっと片方を睨みつけていた。
「……ここまで来て喧嘩はよそう」
さらなる被害を予防せねば。僕は軽く首を振る。
「すぐに戻るんだから、喧嘩してるともったいないよ」
「そうそう」
視界の下の方で、黒帽子がうなずく。にやにや笑いを浮かべながら、「けんかしてる場合じゃねぇぜ、ほんとに」と見事な勝ち逃げを宣言した。
……関係ない僕までなんとなく腹が立つ。多分、もう一人の子と同じ表情で、彼を見つめていたと思う。
そうしている間にも海は波をこちらへ寄せては返し白い砂を湿らせて、服越しに肌を焼けそうな日光がそれを休むことなく乾かしている。
再び駆け出した二人の背中を見つめ、軽いため息をつく。
休日の子どもは強い。
どんな大人も振り回される他ないのだ。
胸の中に溜まったなんとも言えない気持ちを最後の最後まで吐き出してから、空気と一緒にたっぷりの潮の香りを肺へ送り込む。
再び息を吐きながら伸びをして、直ぐそばを風が通り過ぎるのを確かめる。
海から浜へ、浜から海へ……。数え切れないほどの風が流れていく。
足元を眺めながら、寄せる波で靴が濡れないギリギリのところを狙って歩く。
そんな風にして、綺麗に晴れた青い空の下、残された時間を過ごすのは悪くない。
しかし、今日の仲間はそれを許してくれるほど寛容な理解者ではなく、
「くらえぇ!!!!」
の掛け声とともに大量の海水を脛へぶちまけてくる、安息の破壊者だ。
しかも二人だ。
「よっし当たった」
「すごいでしょ、アクアだよアクア」
知らない。
両手にいっぱい掬った海水をかけるだけで水魔法を名乗っていいものだろうか。
しかし、僕の安らぎを求める心とブーツにそこそこのダメージが入った気はする。
「靴もズボンも洗うの大変だからあんまり汚さないで欲しいなぁ?」
「帰ってもどうせ汚すだろ」
赤い方がこちらを見上げ、その隣で青い方がうんうん頷いている。
その通りだがそうじゃない。
「すぐに戻るんだからイライラしてるともったいないぜ」
「そうだね」
乾いた笑いしか出ない。
「あーそうだ、忘れてた」
「何?」
「みずでっぽう。もってきたんだ」
黒い手袋に握られているのは紛れもない水鉄砲だ。どれどれと覗き込むもう片方に、この前海に来た時にとか、誰それに作ってもらってどうたらこうたらと話し込んでいる。
多少の嫌な予感を覚えながら様子を伺うと。
二個ある。
水鉄砲が二個ある。
……。
「じゃあふたりで遊んでて」
と言い始める暇も無く、
「兄ちゃんオトナだからハンデな」
「ぼくら子どもだから武器つかうね」
ふたつのオモチャの銃口は、逃げ場もなす術もない僕へ向けられた。
子どもは強い。
休日となればなおさらだ。
ましてや、快晴の浜辺などに喚ばれてしまえば、その予感は真実に変わる。
極限までコマンドがアップした子ども達二人の前で、1ターンも与えられず戦場に放り出された僕はほぼ無力であり、一撃を放つ余裕もなく打ちのめされる他ないのだ。
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